渡航記2015夏Ⅳ

店主のヨーロッパ渡航記です。
ぼちぼち続きます。
工芸帖ではありませんが、ご興味のある方はどうぞご覧ください。

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もう2週間も経っていました。
モネの家、モネの庭。
次回はかならずこの村に泊まりたい。
そう心に決めて帰りのバスに乗り込んでから、
時間は刻々と過ぎてゆくのですね。
この2週間の間に、もはやたくさんの新しいこと、濃いことに出会いながらも、
ふと心はこの庭に戻ってゆきます。

そもそも、特にモネが好きだったわけではなかったのです。
半日予定が空いていたので、生まれて初めて!ツアーというものに入ってみたのです。
オペラ座近くに集合のバスツアー。
『モネの家 ジヴェルニー半日観光ツアー』
電車とバスを乗り継ぐよりもわかりやすいかな、
と足にさせてもらおうというくらいの軽い気持ちで向かいました。

日本人ばかりのツアー客に、日本人のガイドさん。
乗ったことはないけれど、「はとバス」みたいな感じ?でしょうか。
1時間ちょっとで目的のジヴェルニー村に到着しました。

大型バス用の駐車場と自家用車の駐車場が分かれているくらい、
観光客が多いのだなぁ、苦手な人混みに来てしまったかな?
と思いながら、ガイドさんの後をついて入り口に向かいました。
個人用の入り口と団体用の入り口が分かれていて、
団体用はスムーズには入れてほっとしながら細い道を抜けていきました。

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目の前にいきなり庭が広がっていました。

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画像を見直しても、ちっともちゃんと撮れていません。
ただただ感じ入っていたのでしょうね。
モネの絵が、光、色が目の前に現実に「生きて」あるのでした。

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睡蓮はまだ蕾。

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青年が塵芥を掬い取っていました。

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柵をこしらえている園丁。

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若い女性も伸びやかに庭仕事を進めていました。

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広やかだけれど、人の手の営みが感じられる庭園。
1週間空けて訪ねるだけで、色調が変わって印象が移っていくのだといいます。
蕾がふくらみ、花が咲いてはこぼれ、
その繰り返しを異なる花々が重奏のように続けていくのでしょうか。

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モネの家の中も訪ねます。
今年から(と言っていたような)館内の撮影が許されたとのことです。

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キッチンとダイニングの素敵なこと。
家族で食べることをとても大切にしていた、ということがよく伝わってくる空間でした。

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こういうシーンは、おサルにバナナ。
(とらずにはいられない、、ということで・・)

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九谷焼の招き猫も。

帰国後、うさ村さんがこんな素敵な本を貸してくれました。

モネ 庭とレシピ

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浮世絵のコレクション(ここでは複製展示)も生前のしつらいでたくさん飾られていました。
(写真撮っていませんでした。
余談ですが、ブログで紹介しようっていう気持ちがまったく抜けているのですね、現場で。
レポート的な写真がまったくなくって、自分の興味あるシーンばかり。
なので、レポートとしては不親切な記事ですね。スミマセン)

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うちの尚ちゃんが作りそうな竹のミラー。
(ちょっと自撮り)

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モネが一連の睡蓮を描いた広いアトリエは、
現在ミュージアムショップのようになっていました。

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奥付を見ると今年出たばかり?のような日本語版を購入してきました。
後日持っていきますのでヒナタでご覧いただけましたら。

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印象派というとなんとなくふわふわっとした「印象」で、
ガツンと来るものを求めた学生時代のままに深く接してこなかったのですね。
我が家の本棚に画集もあったというのも、帰国してから気づく始末です。

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実際この庭の中に紛れてみれば、
その光や色の粒子は、絵画の中に紛れているもの、そのもののように感じてきます。
ひとりの画家が見たかったもの、描きたかったもの。
その深い想いが、絵を超えて今目の前にある現実に、今までにない揺さぶりを感じました。
それは、認識しているものと同じものを確認した、というようななぞることではなくて。

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今のモネの家とその庭は、
「ヴェルサイユ財団、ジヴェルニークロードモネ財団」
の会員の力によって維持されているとのことです。
遺族もなくなり、一度は朽ちかけたこの家と庭を
ヴェルサイユ宮殿の修復に力を発揮した
ジェラール・ヴァン・デル・ケンプを監督として、
選ばれた造園家や内装建築家たちが
モネへのリスペクトと高い意識を持って創り上げた空間なのだそうです。

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観光客がにわかに増えだして、人酔いしそうになったので、
村の散策に出ました。

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レストランやB&Bもあるのですが、観光地然としていなくて、
美しい村の佇まいです。

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あら。
画家らしき人が坂道を下りてきたり。

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立ち入ることのできる庭もあって、
ああ、こんな光景モネの絵にもあったなと。

ひとりの人間が見ようとした美、見た美。
それをかたちにしたもの。
モネの場合は絵画。
残された作品、絵画のすばらしさってなんだろう。

そんなことを、緑や花々の気に囲まれて、
人気のない庭でぐるぐる考えていました。

見つめた美を圧倒的なかたちで残すこと。
そのかたちはひとそれぞれなのでしょう。
音楽であったり、彫刻であったり、小説であったり、戯曲であったり…。
そしてその美を見つめた人がこの世から去っていっても、
遺された、示された美が次の世代の人を突き動かしていく。
残っていくことって、まずシステムありきではなく、感動が人を動かしていくのですね。

実は心の隅っこで、いつも小さな不安がありました。
自分が携わっている庭。
ようやく道筋ができて草花も所を得て、喜んでくださる人が増えてきたけれど、
如何せん、そこは我が家ではない。
だから、いつ、どんなことで今の在り様が失われるかもしれない。
別に今そんな問題は何も起きてはいないのですが、
ディレクションをしている者として、その不安はいつも小さな塊となって
溶けることはないのでした。

でも、この庭でモネの仕事やこの家や庭を修復した人たちの仕事を思うと、
美しいと思うことをとことんやるしかないじゃないか。
そんな思いがあふれてきました。
アーティストは、その人の道でとことん表現することしかないし、
プロデュースやディレクションをする者も、
信じることを姿にしていくことにこそ、力を尽くせばよいのだと。

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一人旅、ひとりの時間だからこそ、こんな風にも思えたのかもしれません。
書いていて、あまりにストレートすぎて、ちょっと恥ずかしいけれど。
美術館の壁に飾られた絵画を前にしただけでは考えなかっただろうことを
長閑で美しいジヴェルニー村で心に刻みました。

八生さんとゆっくりとお話ししながら、
モネの庭のスピリットを私が携わっている庭でも咲かせていきたい。

そして今、赤木さんとやり取りを始めた「次のことを考える」ことも、
この村で感じた気持ちのままに進めようと。

ジヴェルニー村。
次回はぜひこの村に泊まって数日を過ごそうと思っています。