『パターソン』

映画を観てはその世界に浸った子供の頃、
ジャッキー映画を観てはカンフーマスターになりきり、
ジーン・ケリーに憧れてはへっぽこタップダンスでジタバタしたものです。
映画を観た後に新しい世界が待っている。
映画体験の醍醐味かもしれません。

そんな「世界が変わる魔法の映画」に久々に出会いました。

ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』

昨年公開の映画なので、すでに観ている方も多いのではないでしょうか。

ニュージャージー州のパターソンと言う街に暮らす、
バス運転手のパターソン。彼の日常を一週間描いた物語。

映画的カタルシスも無ければ、大した事件も起きません。
淡々と同じような毎日を繰り返すパターソンの生活ですが、
ライフワークの詩を書くことで瑞々しい日常に生まれ変わります。

お弁当箱を下げて出勤する見慣れた道すがらも。
バスの運転中に耳にする乗客のたわいのない会話も。
不思議と、美しく、愛おしく、思えてきます。

「自分らしい生き方をつかむ手かがりは、日々の生活の中にある 」
監督の言葉です。

詩を書くパターソンが世界を詩的に見つめるように、
その人らしい生き方で世界を見渡したら、
変わり映えしない毎日も新しくかけがえのないものになる。
日々取りこぼしているモノをきちんと汲み取れる、
そんな視線をもらった映画です。

宝物のような一本。